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現在、WOWOWにて毎週木曜日23時30分より(2008年1月10日の放送より、毎週木曜日深夜0時より)、好評放送中の『神霊狩/GHOST HOUND』。ダム湖で発見された謎の水死体、信の母の存在、匡幸の父の秘密など、シリーズ後半に向け、次々に新たたな謎が判明しています。シリーズ構成・脚本を担当されている小中千昭氏に、今後の物語の見どころ、制作時のエピソードなどを伺いました。 ![]() ――まずは、改めて本作に参加されたきっかけについて教えてください。 小中千昭(以下、小中) 本作の監督である中村(隆太郎)監督から誘われました。もともと士郎正宗さんとProduction I.G さんが共同で開発している企画が2本あったそうです。 1本は電脳やハッキングといった士郎正宗さんっぽい世界観の企画で、もう1本はちょっと士郎さんっぽくない作品の企画。そのうちの士郎さんっぽくない企画が川口(徹)プロデューサーに振られ、川口プロデューサーから中村監督、中村監督から私にという流れが、本作への参加のきっかけです。 個人的には、非常に得意なジャンルである反面、何度かネタにしている伝奇モノの世界観だったので、そこには気を遣いながら制作を進めています。士郎さんの原案に、幽界という言葉があって、私はそれを「かくりよ」と読ませたわけですが、ベースには民俗学的なものと、古神道的なものを世界観として含ませています。 ――ちなみに、士郎正宗さんの原案は、どこまで作品世界に反映されているのでしょうか? 小中 士郎さんの原案自体、アニメスタッフが自由に創作できるようにと配慮されたものだったので、基本的に原案ベースで物語を構成しています。とはいっても、士郎さんの原案は、本当にざっくりとした設定があっただけなので、具体的なお話の流れは私が作っています。 変更した部分でいえば、原案ではダムが建設されて自然界のバランスが崩れるという流れを、現代風にバイオ関係の施設が建設されたことに、主人公たちの年齢設定を高校生から、中学生にしたところですね。 魂(たま)抜けは、私が提示した言葉ではありますが、原案の部分で主人公たちが幽体離脱をする、というのはありましたので。 体脱すると二頭身になる、とか、狼男などに変身出来る、というのも原案に則った設定です。
![]() ――本作では、自然破壊にしても、幽体離脱にしても現実世界との地続き感が大切にされています。 小中 リアルな日常を舞台にしないと非日常の面白さは描けない、と私は思っています。むしろ、非日常の要素を面白く見せるために、リアルな舞台設定を描いているといった方が良いのかもしれません。 視聴者に、実際にこういう人いるな、と共感されないと、そこに登場する幽霊やお化け、あるいは怪獣が生きてこない。そういう意味でいえば、実は私の関心は、幽世(かくりよ)そのものを描くところには全くありません。 しかし、脳科学的なアプローチや先端的な物理論を取り上げた場合、リアルな現実世界に対するアナザー・ワールドは避けて通れない概念です。アニメ的な異世界ではない、リアリスティックな異世界を、日常空間と隣り合わせで描いていくのが、このシリーズのヴィジュアル面での狙いです。 加えて、今回、エコロジー的な要素を取り入れています。もともと、士郎さんの原案に緩やかながらも大きなテーマとして提示されていたからですが、今、エコというと、人間にとって都合が良い、悪いの意味あいで取り上げられることが多い。けれども、エコロジーの概念を、市場経済やパワーゲームによりかからないかたちで扱えば、たとえアニメーションであっても意味があるだろうと考えたからなんです。 ――士郎さんの原案があったとはいえ、本作ではシリーズ構成を担当され、FOCUS:19 を除いて、すべての脚本を担当されています。 小中 シリーズ構成とはいっても、企画開始の段階で、物語全体を神様のように見通せるわけではありません。特にオリジナル・シリーズの場合、私は帰納法型で物語を作るのは厭なんです。 登場人物や舞台を具体的に描写していくことで、演繹的にドラマが生成されていく。これがシリーズ物の醍醐味だと思っています。 今回のシリーズは、中村監督が私に全幅の信頼を置いてくれました。もしかすると、プロデューサーの方々をハラハラさせてしまったかもしれませんが、次回がどうなるのか誰にも言わず、連載小説のように一本ずつ書いていきました。もちろん、私のなかでは常に計算していたわけですが……。こういう作り方が最良である、と最初から掴んでいた訳じゃなかったんですけどね。 ――具体的には、どんなかたちで本作を掴んでいったのでしょうか? 小中 実は、最初に書いた FOCUS:01 は、今とは違ったかたちにしていたんです。 FOCUS:01 で太郎、信、匡幸の三人が神霊に追いかけられ、その拍子に三人同時に魂抜けするまでの設定説明を、冒頭で言い切ってしまうパターンのものでした。 その FOCUS:01 は決定稿まで行っていたのですが、やっぱり思い返して、自主的にボツにしたんです。アニメーションを見慣れた視聴者には、こういう"設定言い切り型"の方が親しみやすいとも思ったのですが、このシリーズでは、真面目に「少年記」を描いていこうと思っていたので。非日常的な出来事が起こる前の段階を、丁寧に描いておきたいと考え直したんです。
![]() ――少年達の日常といえば、架空の山間の地・水天町を舞台に、酒蔵や神社など、田舎っぽい雰囲気作りにこだわっているように思います。 小中 最初の頃、どういう雰囲気の作品にしようかを考えていたとき、中村監督が福永武彦氏の小説『廃市』のことをボソッと話したことがあったんです。 『廃市』の舞台は福岡県柳川市がモデルになっていて、大林宣彦監督の映画にもなっているくらいで、映像的にもとても良い舞台です。 でも、『神霊狩/GHOST HOUND』の原案でいえば、メインとなるのはダムが近い山間の地です。どうしようかなと思っていたとき、本作の設定制作である松山(明央)さんが、まさに絵に描いたような、我々のイメージにぴったりの山間の田舎町を探してくれたんです。 ――『神霊狩/GHOST HOUND』の舞台が山間の水天町と、掘割のある久間田の2つというのも、当初からの構想だったのでしょうか? 小中 ダムが登場する原案には、もともと山間の里山のイメージがありました。よくアニメーションでは、地球や世界、日本といったマクロ的な視点での捉え方を行います。でも、今回は、中村監督からそういった見せ方は絶対にしたくないという意思がありまして。基本はミクロ、主人公たちの身の回りの出来事で表現していこう、と。 中村監督は、最初の段階からオチを気にされていました。「世界観が変わるとか、そういう(規模の大きな)話までやるんですかね?」とよく聞かれましたね。 もちろん、「そういうのはやめてほしい」と言われたわけではありません。ただ、私としては世界規模的な話にはならないような方向性で考えました。 かといって田舎の里山で閉じこもっているのも嫌だったので(笑)、主人公達が大人の世界を垣間見る場所として柳川をモデルにした久間田を設定し、それと対照的な位置づけとして山間の地・水天町があると考えました。 ――当初より「少年記」をテーマにされていたと伺っています。士郎さんの原案にある主人公達の年齢を、高校生から中学生に下げた理由について教えていただけませんか? 小中 士郎さんの原案は高校生ですが、中村監督に、もうちょっと少年感を出していきたい、という考えがあって。 いまどきの高校生といえば、もうほとんど大人じゃないですか? 田舎だともう少し違うのかもしれませんが、少年達の成長過程を見守る、という意味あいでは、中学生の方が良いかな、と思ったんです。 とはいっても、本作はだいたい1年くらいの話なので、成長というほど大げさなものにはならないとは思いますが……。少年達を取り巻く友人や、大人達との距離感の取り方、考え方みたいなものがちょっと変わる、そのくらいのつもりで取り組んでいます。 ――本作のスタッフィングについて小中さんは、どんな印象をお持ちですか? 小中 『神霊狩/GHOST HOUND』は、本当にスタッフに恵まれた作品だと思います。メイン・スタッフは、中村監督の信頼する人たちばかりですから。 各話の絵コンテ、演出、作画監督の方々も、段々と中村監督のやろうとしていることが分かってきたみたいで、画面が充実してきましたね。 何より、キャラクター・デザイン/総作画監督の岡 真里子さんに参加してもらえたのが幸せでした。誰よりも最初に、太郎たち登場人物に愛を注いでもらえた。岡さんと話したあれこれが、後半のシナリオには随分影響されています。
![]() ――作品の内容に目を向けると、謎が謎を呼ぶような展開で、次の物語が気になります。 小中 謎というか、もともとある一つの謎で視聴者を引っ張っていく話ではなく、交錯していくような物語ですから。ただ、最初はやはり、太郎の誘拐事件というのが鍵となって物語を牽引してく。 ここは『ツイン・ピークス』や『キングダム』といったミニ・シリーズでの王道的構造でしょう。しかしそこから先は、この『神霊狩/GHOST HOUND』以外にはありえない、オリジナルなものになっていくはずです。 さまざまなストーリーラインが平行して進み、普通の作品だと、最後にはそれらが一本につながっていくわけですが、この物語では、そう単純にはつながりません。 ――それは、それぞれのエピソードが独立したまま終わる、ということでしょうか? 小中 いえ、そういうわけではありません。作品のなかで、太郎や信、匡幸、都、駒玖珠、平田と、いろいろなキャラクターの人生が交錯している。それだけに、それぞれの事情があるわけです。 ある人の事情がこういうかたちになって、その事情は実はほかの人に何らかの理由があった、あるいは、このキャラクターの行動には、実は前世からの因縁があった、といった因縁や遠因があるような物語は、私は好きじゃないんです。むしろ、そういったものを否定する物語にしたかった。 もちろん、ミステリ的な謎として提示したものについては、物語のなかできっちり決着をつけますので、どんな結論になるのかを想像しながら愉しんでほしい。でも、それだけで終わるつもりはありません。
――最後に、これから『神霊狩/GHOST HOUND』をご覧になる方に向けて、何かメッセージをいただけますか? 小中 『serial experiments lain』のときの私と中村隆太郎監督は、奇を衒って、お互いこういうのがカッコイイよね、とちょっと構えて、普通とは違う作品作りに取り組んでいたところがありました。 それは、出会ったばかりだったから、お互いの表現がとても刺激的で面白かったからです。しかし、今回は、中村監督のTVアニメーション演出家としての力を最大限に発揮出来るような場としての、シナリオを書くことが出来たと思っています。 『神霊狩/GHOST HOUND』にも、突飛で変な要素は多々あるシリーズですが、最後までご覧いただければ、いかに真っ当で王道的な「少年記」を描こうとしていたか、分かってもらえるはずです。
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